麻痺からの脱却~日本二周目挑戦中!~

2010年に脳卒中で右半身麻痺に。でも、「絶対に諦めない」をモットーに現在は『日本2周目』に取り組んでいます。

2年振りの温泉!東北旅行記<その2> 感動の猊鼻渓船下り


今週もいろいろあった一週間でした。
書きたいことはそれなりにありますが、まずは旅行記の続きを進めてゆくことにします。

1日目:6月22日(金)その2

前回、新幹線を岩手の一関で降り、一両編成の大船渡線で「猊鼻渓駅」まで来たところまで書きました。

一関近郊には似たような名前の渓谷観光地が二つあります。メジャーなのは「厳美渓」。下を川が流れる深い渓谷を上から眺める観光地で、一関市内や高速からも近く、この2つの中では(まだ)メジャーな観光地です。周辺には「厳美渓温泉」というかなり深くまで掘って30年前ぐらいにやっと発掘した温泉と観光ホテルも何軒かあります。対岸のだんご屋さんとロープウェイを使ってやり取りをするのが名物で、この風景はTVなどで見たことがある方もいると思います。我が家も家族3人の時代(息子が生まれる前)にドライブで来たことがあり、だんご屋さんとのロープウェイを使ったお金・商品のやり取りは食いしん坊の妻の記憶にもしっかりと残っていました。

一方、この「げいびけい」と読みにくいこちら猊鼻渓厳美渓に比べるとややマイナー。マイナーな理由を考えてみると。
・渓谷を下から見上げる渓谷。1時間半の船下りをしないと観光ができない。(ちょっと見て、さっと帰るような短い時間の観光ができない。)
・一関からやや遠い。おまけに高速の反対側だし、近所に他に観光地が見当たらない。

の2つが大きな理由です。厳美渓が高速を降りてちょこっと観光してそれなりに短い時間で楽しめる反面、猊鼻渓はわざわざ時間をかけて行き、じっくり観光をしなければならない観光地なのです。なので隣県宮城県出身の妻も初めての訪問なのだそうです。

でもこの船下りが風情があって素晴らしいのです。
以前私が訪れたのは25年ほど前の冬。雪深い渓谷の船下りをしながら、鍋料理と日本酒を楽しむ冬ならではの屋形船でした。仕事ではなく会社の同僚と行ったので、冬のしんしんとした風景・旅情と日本酒・鍋料理で一度でファンになり再訪を願っていましたが、ようやくその願いが叶って、話だけで羨ましがらせていた妻を連れてくることができました。

猊鼻渓の船下りの乗り場は駅から私の足で10分弱。同じ列車を降りた方々からは遅れ、ようやく船着き場に到着、乗車券を購入します。11時過ぎに駅に到着、次の船は12時が定刻なので、その後のバスの時間を考えると昼食は乗船前でも乗船後でも時間は中途半端です。計画の段階でどうしようかと悩んだところではありますが、「まぁ、何とかなるだろう!」といつもの「緻密な計画」&「ぶらり旅」のコラボ計画でしたが、何と「臨時便 11:30」の表示が!! これで昼食もゆっくり食べられるので、急ぎ乗船券を購入します。

乗船券は1500円ですが、私は「身障者割引」が使えて半額になります。この身障者割引、個人的には利用にやや抵抗があるのも正直なところですが、家計が決して楽なわけでもないので、750円でも節約できる誘惑には逆らえません。遠慮がちに身障者手帳を提示し、半額での券(子供用の切符)を購入します。

船の乗り場は電車の鉄橋と何軒かの土産屋・レストランが見える場所です。
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船は40人ぐらいが定員の船。椅子はなく靴を脱いで全員が座って左右の渓谷を見上げるパターンです。臨時便が出るだけあって、船には大船渡線の乗客+車で来た人で合計30人以上の人がいてほぼ満席状態です。私は靴を脱ぐのが皆よりちょっと面倒なこともあり、身障者の特権でお願いして靴を脱ぐスペースに小さな椅子を借りて座らせていただき、川下りの出発です。
(人の半額で乗っているくせに…、贅沢! とちょっとまだ釈然としませんが。)

この川下りは、砂鉄川という流れのゆったりした広い川を、一切エンジンがついていない手動の船でクルーズするものです。しかも先ほどから「川下り」と書いているのですが、実態は往復のクルーズです。因みに往路は川をのぼり、復路が本当の川下りです。

この船を操っている船頭さんはたった一人です。40人以上の人たちを乗せた船でも、たった一人の船頭さんの竿一本で動いているのです!
しかもほぼ満員に近い私たちを川の流れに逆らって上流まで運ぶ船頭さんは何と若い女性。、しかもこの6月に船頭試験に合格した「超新米」船頭さんなのだそうです。
(ただ、この「新米です!」という事実は、船頭さんは下船の寸前までカミングアウトしませんでした。最初に言って乗客が怖がることを恐れた為なのでしょう…)
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一応、座布団のような救命用の用具は全員に渡されますが、川の水底は大変浅く、万一転覆した場合でも、子供でも立ち上がれる程度の深さなのだそうです。なので船頭さんの竿はオールではなく本当に竿です。この竿で川底を押して川を昇るのだそうです。
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本当に流れのゆっくりした砂鉄川を船はゆったりと昇って行きます。左右の渓谷は高く、徐々に川も狭くなってきます。船頭さんは左右の景勝・奇岩を説明しながらのゆったりしたクルーズです。
クルーズではありませんが、下から大きな奇岩を見上げる風景は、アメリカ・ユタ州の有名な国立公園「ザイオン」を彷彿とさせます。(個人的にも2回行った大好きな観光地です!) ザイオンのように猊鼻渓にも水鳥や魚、川べりには小動物もかなりいて、自然を満喫できる時間です。
その日の朝の埼玉での豪雨が嘘のように、岩手らしい青空が広がっています。 
 
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片道40分のクルーズの終点で上陸し、猊鼻渓の上流を20分程度散策できます。終点では「石(投げ入れ専用 5個100円也)を投げて自然の穴に入れると願いが叶う。」という岩がありましたが、右手不自由の私は左手では自信がなく、願い事は妻に託しましたが、全く届かずに終わりました。
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帰りは船下り定番、船頭さんの舟歌を聞きながらの大自然散歩。心地よい時間が流れてゆきます。
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船着き場到着は予定通り13時。バスの時間までまだ1時間近くあるので、安心して「げいびレストハウス」へ。名物のそば粉100%の十割そばのざるそばと鮎の塩焼きをオーダー。
料理を待っている間に渓谷を渡る列車が通ることがわかり、しばし「鉄ちゃん」に戻った気分で列車の到着を待ち、1両の大船渡線をパチリと撮りました。
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そば粉100%はつなぎがないのでパサパサしているという先入観があったのですが、このざるそば、美味しく戴きました。
鮎の塩焼きも、ほろ苦さがとっても美味で、やっぱり「自然の食べ物は美味しい!」と改めて気づかせてくれました。
100%そば粉のざるそば(しかもボリュームたっぷりで、都内なら「大ざる」レベル)とその場で焼く鮎の塩焼きで合計1000円。とても観光地値段とは思えない超リーズナブルな価格で大満足です。もう少し高くしてもいいような気がしますが…

メインの観光も無事終了し、いよいよお目当ての温泉に向かいます。行きに乗った大船渡線は3時過ぎまで列車がなく、これを待っていると旅館の到着は18時近くになります。JR「いわてDC」の協賛で猊鼻渓から平泉駅までの直行バスが特別運行されていますが、平泉に行ってもその先は普通列車しかなく、花巻へ行くには結構不便です。
ついては、近所の部落を通る路線バスがあり、これに乗ると一関に行けて一関から先は新幹線に「大人の休日倶楽部パス」で乗れるので、迷わず路線バスを選択。近くのバス停まで歩き、一ノ関駅を目指します。
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バスは国道をスイスイ走ると思いきや、部落があるごとに国道を外れて部落の中をこまめに通ってゆきます。だから余計時間がかかるんだ… とは思いますが、住民の足としてはやむを得ないのでしょう。一関近郊ではさらに寄り道をして大きな病院を往復。
3時前にようやく一関駅に到着しました。

一関からは新幹線で3駅先の新花巻まで。自由席で十分と思っていましたが、午後の時間なので予想以上に空いていて、夫婦2名で1列(5人分)を独占し、30分程度のローカル新幹線を満喫しました。

ということで、次回はいよいよ温泉をご報告します。