麻痺からの脱却~日本二周目挑戦中!~

2010年に脳卒中で右半身麻痺に。でも、「絶対に諦めない」をモットーに現在は『日本2周目』に取り組んでいます。

【2018年東北夏祭り】<その6:五所川原 立佞武多>


5日目:8月5日(日)

この日は、私的にこの旅最大の楽しみであった五所川原立佞武多を見に行く日。生憎、この日も前日に続いて小雨模様、でも天気予報を信じれば、夕方には止むとのことです。
弘前から五所川原までは僅かにJRでも30分、という事で真っ直ぐ五所川原に向かっても仕方がないので、津軽半島を少しだけ観光することに。
津軽半島で、今私がもっとも訪れたい場所は見事な千本鳥居がある高山稲荷神社。2年前にはその存在は認知していたものの、そこまで見事な千本鳥居であるとは知らなかったので、迷いなくスルーした場所。でもいろいろと調べると、この千本鳥居に行くまでにはかなりの急階段があるらしいことが判ります。スロープの迂回路や手すりはあるようなのですが、今の妻の体調では無理と判断。次回(3周目)に回すことにします。
そうなれば、龍飛崎まで行くほどの時間はないし、津軽半島付け根辺りの観光地としては、私が避けて通ってきた金木くらいしかありません。

私がずっと金木に行かなかったその理由は、高校時代の私は金木出身の小説家太宰治に異常なまでに心酔していて、今でも金木に行ったら、自分でも全く抑制が効かなくなってしまう気がしていたためです。高校時代には太宰の全作品を何度も読み返し、太宰が入水自殺した玉川上水に自分も死に場所を求めて行ったこともありました。(勿論、そんな勇気は私にはありませんでしたが…)
 やがて流行り病のような太宰熱は徐々に醒めてゆき、最後に太宰の文に触れたのはもう35年以上も前のことです。
大学1年生の夏に初めて東北に来た私は、何はともあれ小説「津軽」を持って、太宰の生家がある金木に降り立ち、当時は旅館として営業していた生家「斜陽館」をただ外から1時間以上ボーッと眺めていたのです。
でも、とりあえず今回は金木に行ってみようと思います。もう35年も経っているのだから、"太宰病、もう再発はしないだろう!?"という思いがあったからです。

弘前をゆっくりスタートして、金木を目指します。この道をちょっと寄り道すれば、2年前にも訪ねた「鶴の舞橋」に行けるのですが、この曇天では岩木山の眺望も望めそうにないため、立ち寄りません。金木での観光目的地は、今は旅館を辞めて記念館になっている生家「斜陽館」と、すぐ近くにあるという「津軽三味線会館」の2ヶ所。道すがらは、ず~っとごく普通のいなか道でしたが、その2つが近づくと大型バスはじめたくさんの車が詰まっています。2つの施設の共通駐車場は、たくさんの車と何台もの大型バスでものすごい混雑! 何とか駐車場は確保できましたが、斜陽館にも三味線会館にも人々が行列を作っています! さすがはお祭り効果、普段は人もまばらなところだろうに… こんなに人が多く、おまけに外国人も凄くたくさんいます! 外人さんが太宰治を知っているとはとても思えないのですが…  太宰さんも、あの世で「え~!? 外国人??」とビックリしているのかも知れませんね?

まずは、意を決して斜陽館に入場してみます。
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この混雑により、感傷に浸る余裕もないことが却って私には好都合だったようです。次々と人が来るので、のんびり見ることなんか出来ないし、展示物も太宰治の関連というより、地方の名家であった”旧津島家”としての展示が中心だったので、ノスタルジーに浸る暇も余裕もありませんでした。
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でも、在りし日の太宰を彷彿とさせる展示を見て、涙が溢れて止まらなくなった瞬間もあるにはありました。
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遠くを見ている振りをして、妻には泣いているところを何とか見られずに済みましたが… 
やっぱり、斜陽館は私にとっては鬼門で、いつまでたっても冷静に見学できそうにはありません。

津軽三味線会館の実演時間は11時。ちょっと前に行ったのでは、座る場所がなくなる恐れがあったので、早めに入り座席を確保。津軽三味線の実演が始まるまでは、外の歴代津軽三味線の名人の展示を見学。その中に、とても懐かしい名前を発見。三橋美智也と言えば、私の子供時代にヒット曲を多く輩出した超有名歌手ですが、実は私が懐かしいと思うのは、この人の家が千歳烏山で、私が中学生時代に住んでいたところのすぐ近く。時折散歩している三橋さん(と思われる老人)とすれ違い、「こんにちは~!」と、言葉を交わした記憶があるからなのです。
有名歌手であることは当時からよく知っていましたが、津軽三味線界でもこんな有名人だったなんて… 恥ずかしながら、この時初めて知りました!
ほぼ満員の会場で、津軽三味線の演奏を満喫。これだけ観客が多いと、演者も力が入るのでしょう。
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津軽三味線と聞いて私が思い出すのは、昭和60年頃に「帰ってこいよ」がヒットした歌手松村和子津軽に来ると必ず何度も口ずさむ、私の大好きな曲です。松村和子さん、今はどうしているのでしょう?

今日のお昼は十三湖で。十三湖名物と言えば”しじみ”ですから、"しじみラーメン"で名高い民宿兼食堂を目指します。金木より更に北まで来たし、途中の道では車に殆んどすれ違わなかったので、"ここまで来る人はさすがに少ないかな?"と思っていましたが、中に入ると意外に大きなお店なのに席が空くのを待っている人は10人以上!
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15分程の待ち時間で席を確保し、名物しじみラーメンに加えてアサリバターならぬ「しじみバター焼き」を注文。十三湖しじみはとにかく大きいことで有名で、このしじみバター焼きもアサリに負けないくらいの大きさです。
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個人的にはしじみと言えば食べたときの味わいよりも汁などに沁み出す出汁というかエキスが美味しいので、貝そのものの味だけで言えば、アサリの方が上だと思っています。ここ十三湖しじみがアサリのサイズになったところで、それは変わらない印象でした。勿論バター焼きの汁もラーメンのスープもしじみのエキスが沁み出て、とても美味だったのですが… (食べるのに夢中で、ラーメンの写真撮るのを忘れました!)

いよいよこの旅のメインの街である五所川原に向かいます。太宰治が小説「津軽」で、「東京で言えば”浅草”」と例えた五所川原ですが、その「津軽」を持ち歩いた最初の旅でも、五所川原の印象は殆んどありません。その後も津軽鉄道への乗り換え駅として何度か下車しましたが、津軽鉄道の”ストーブ列車”などのインパクトが強すぎて、乗り換え駅の五所川原は殆んど記憶には残っていないのです。
ということで、私の五所川原の圧倒的なイメージはと言えば、「吉幾三」。 デビュー曲「俺は田舎のプレスリー」で、”生まれ青森、五所川原”というフレーズが、この日も運転中に私の頭の中を何度もぐるぐると駆け回ります。久し振りに聞きたいところですが、私の音楽コレクションに”雪国”や”酒よ”はあっても、このデビュー曲はありません。

五所川原の宿泊は古巣の旅行会社で予約できたサンルート。ビジネスホテルとシティホテルの中間と言えるサンルートが、今回の旅で一番豪華で高いホテルです。ビジネスホテルに慣れたので、サンルートのサービスがとても心地よく感じられます。

チェックイン後は、この旅恒例となった”妻をホテルに残しての街歩き”。今回、まずは今晩の主役、巨大な五所川原立佞武多に会いに行きます。巨大な立佞武多は3台、普段は”五所川原立佞武多の館”という施設に置かれていて、普段からそこに行けば館内に展示されている立佞武多は見られるのですが、その館から出て五所川原の街を闊歩するのは、このお祭り期間中だけ。
巨大な立佞武多を収用する建物だけあって、立佞武多の館は巨大なビルのような田舎町にはいささか不似合いな佇まい。
中に入ると、そこには正に巨大な立佞武多が!!
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文字通り、「デ、デ、デカイ!!」いきなり、度肝を抜かれてしまいます。
館にはエレベーターがあり、順路はそのエレベーターで最上階の4階まで昇ると、ようやくその立佞武多達を、上から眺められます。
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その後、3台の立佞武多を囲んだスロープを徐々に下りながら、近くからじっくり見学することができます。間近で眺めたイメージは、巨大な山車というより、私的には子供時代によく見ていた"ジャイアント・ロボ"みたいな感じ。
途中、解説も聞けます。立佞武多、私はずっと"たちねぶた"だと勝手に思っていたのですが、実は"たちねぷた"でした。サイト等はみんな漢字表記だし、ねぶたとねぷたは方言の微妙な違いだとは知ってはいたのですが、ここ五所川原弘前に近いので、"ねぷた"なのだとか… よく考えたら当然のことなのに、やっぱり思い込みって恐ろしい…
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巨大な立佞武多は3台あり、1年に1台づつ作って入れ替えるのだそうです。つまり、3年後にまた来れば今年の立佞武多はすべて入れ替わるようです。
昨日はここ五所川原も雨だったようですが、ねぶたやねぷたと違ってビニールは掛けません。巨大過ぎて掛けられるビニールがないので、最初から防水仕様で作られているのだそうです。
そういえば、お陰様で雨はあがった模様! 天気予報に感謝ですね。
この3台のジャイアントロボが出動するところも是非見たいのですが、既に場所取りの人が館をすっかり取り囲んでいます。この、ガラスの部分が開くのだそうです。何となく、昔の"サンダーバード"みたい??
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五所川原のもう1つの観光スポットは、「吉幾三コレクションミュージアム」。
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私のイメージが、ずっと”五所川原=吉幾三”なのですから、行かない訳には行きません。入口でまずはスタッフの方と雑談
私「吉さんは毎年、立佞武多には帰って来て参加しているのですよね?」
スタッフ「そうなんですが、今年は"参加できない"という連結があったんですよ。」
"もしかしたら、ここで吉幾三に会えるかも??"という期待は、儚い夢でした。
展示は吉幾三のステージ衣装や今までに貰ったゴールドディスクなどの表彰など。
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見学を終えると「カラオケ&名曲コーナー」があり、先ほどのスタッフから「何か歌いたい(または聞きたい)吉幾三の曲はありますか?」と尋ねられたので、迷わず「"俺は田舎のプレスリー"をお願いします!」とリクエスト。
他のお客さん達は知らない曲だったのか、怪訝そうな顔をしていました!

いよいよ立佞武多の本番。結構大きい有料観覧席の我々の席は前の方の3列目ですが、前の方とはいいながら一番端っこの席。この有料観覧席からは立佞武多が館を出る瞬間は見えないことは判っていたので、すぐ近くのホテルをゆっくり出たのですが、早くも1台の立佞武多は有料観覧席に程近いスタート地点にスタンバイしています。
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3台の立佞武多は、周回コースのそれぞれ違う場所からスタートするようなのです。それにしても、改めて立佞武多は兎に角デカイ! 五所川原駅前のどのビルよりも高いところに顔があるのです。立佞武多を初めて見た妻も、その巨大さに唖然としているよう… 当然ですが、立佞武多の動きはとてもゆっくり。ねぶたやねぷたのように回転したりこっちを向いたりは、あの巨大なジャイアントロボには無理なのでしょう。
その代わり、巨大な立佞武多の間には青森ねぶたのような山車が行進。立佞武多と比較するからでしょうが、とても可愛らしく見えてしまいます。
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その合間には跳ねる人達の行進が…「ヤッテマ~レ・ヤッテマ~レ」の掛け声は、ねぶたともねぷたとも違うのです。
やがて2つ目の立佞武多がやって来ます。今年で引退する(3年目の)出雲阿国です。
スタートしてしばらくすると、山車も跳ね人の来るペースが落ち、はじめの頃と比べるとやや間延びした印象。復活したばかりで、まだまだ若いお祭りなので、今後の運営の課題でしょう。
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3つ目の立佞武多が来ると、フィナーレも間近。
とにかく、今まででこんなにどデカくてかつ動くものは飛行機ぐらいしか見たことがありません。本当に驚愕の体験でした。

3台の立佞武多が館に格納されるのを待つ元気もなく、有料観覧席を後にします。今回、立佞武多を見るベストポジションは、立佞武多の館すぐ近くのお店で@1000円で貸し出される椅子に座って見るのが、立佞武多の出入りからパレードまで全てが見られるベスポジであることが判ったので、3年後は絶対そこで見ます!3年後も、サンルート取れればいいけれど… でも、これだけのお祭りなのだから人気は益々加熱するのでしょうね!?

この日は、この旅で唯一夕食の予約がない日。先ほど、五所川原の飲み屋街の下見は済ませてはいましたが、ホテルもすぐ近いので何となく飲み屋街まで歩くのが億劫になり、結局近くのローソンで弁当と酒を買い込み、部屋での晩餐となりました。

五所川原立佞武多が見られて、本当に幸せでした!立佞武多を見ることができたのは、本当に色々な皆様のお陰。本当に心から感謝申し上げます! ほろ酔いの中、幸せいっぱいで眠りにつきました。