麻痺からの脱却~日本二周目挑戦中!~

2010年に脳卒中で右半身麻痺に。でも、「絶対に諦めない」をモットーに現在は『日本2周目』に取り組んでいます。

2020年みちのく鉄ちゃん旅<その1:盛駅で友人と遭遇!>

夏に北陸から帰って来た後には、半年間の旅行自粛が明けた反動が一気に来たかのごとく、私の頭の中は今まで以上に旅行一色。「次はいつ、どこに行こうかなぁ?」と毎朝毎晩考えると夜も眠れないくらいの日々でした。
ある日、いつもの通勤途上で乗り換え駅を歩いていると、構内放送で「大人の休日倶楽部パスを臨時発売します。」という宣伝を耳にし、早速ホームページをチェックしたところ9月の4連休の後から10月の始めまでの約2週間の期間で臨時発売があるとのこと。この期間ならば金曜日か月曜日を休んで2泊3日の旅行ならば何とか行けそうな感じです。大人の休日パスの条件を細かく見ると、「JR東日本全線に加えて、三陸鉄道などの一部私鉄にも乗れる。」という条文を見つけて、「じゃあ、昨年10月に台風19号直撃で断念した"三陸鉄道全線完乗"の旅のまさに絶好の機会到来!
ということで、9月後半の金曜日に何とか休みを調整して、旅に出ることにしました。でも、期間を2泊3日とすると三鉄だけでは時間が余ってしまうので、他にも鉄ちゃんに戻って楽しむ行き先が欲しいところ。そう考えながら9月を迎え、我が家の2つ飾ってある鉄道カレンダーをめくると、トイレに飾られている鉄道カレンダーの魅力的な9月の鉄道写真は「大湊線」。大湊線には学生時代に乗ったことはあるものの、その時の記憶は、悲しいくらい全くありません。

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大湊線

もう一つ、居間の片隅に飾ってある鉄道カレンダーの9月の写真は「秋田内陸縦貫線」。昔国鉄の時代には盲腸線2本がつながっていなかった路線が、第三セクターになりつながって久しい、私的には未乗で憧れの 鉄道。

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秋田内陸縦貫鉄道(通称:秋田内陸線

「狭い家なのに、一体いくつ鉄道カレンダーを飾ってるの?」と突っ込まれそうなところですが、常に旅に出る気持ちを忘れないために、ここ数年家中のカレンダーを全て「日本国内の名所」にしています。カレンダーなんて以前は仕事での貰い物を適当に貼っていたのですが、近年はちゃんと本屋さんを巡ってそれなりに良さそうなカレンダーをじっくりと選び、ちゃんとお金を払って買っています。その2つのカレンダーが今回の旅のヒントをくれたとしたならば、昨年末の一本約1500円の投資は、正に効果があったのでしょう。早速、その3線を楽しむ3日間の日程ができあがり、予約も完了。いつもの鉄ちゃん旅と同様、妻は同行せず、一人旅です。

ところが、好事魔多し。9/25の出発を3日後に控えた日に、台風が発生します。昨年10月の3連休にも三鉄の旅を予定していたのに、超大型の台風19号で旅行を断念させられた記憶が鮮やかに甦ります。昨年の台風19号では旅行どころか各地に甚大な被害をもたらし、三鉄もかなりの被害を受けています。その台風から今年3月の全線運転再開までに、何と半年も掛かってしまっているのですから…
今年の台風はさすがにそこまでの規模ではないけれど、台風の二日前に降り始まった雨の影響で、既に三鉄の2区間が2日前から運転見合せになっています。天気予報ではこの先私が行くまで雨が止む予報はないので、動くか運休かをビクビクしながら旅行に行くのは嫌だし、いくら列車に乗るだけとはいえ、やはり豪雨では車窓風景は楽しめないし…
ということで、二年連続で台風のお陰で旅行を断念して、予約も全てキャンセル。休むつもりだった金曜日も出勤して土日共に悶々とした日々を過ごします。台風は予報よりやや逸れたので、私が乗る予定だった列車は何とか動いたようですが、そのすぐ後の列車は雨で運休になったらしく、行ったとしてもとにかく冷や冷やの連続だったのだろうと想像していました。 

でもやっぱり三鉄に乗りに行きたい気持ちは収まりません。大人の休日パスが使える期間はあと一週間、何とか火曜日に一仕事終えるとこの週の金曜日には休めるメドがつき、天気予報を見ると今週は良さそうなのでホテル等を急遽予約。大人の休日期間でも列車もホテルもちゃんと取れるのは嬉しい反面微妙な気分ですが、ちょうど一週間遅れの10/2(金)から、三陸鉄道をメインとした「東北鉄ちゃん旅」を実施することになったのです!
正に「三度目の正直」の旅のスタートです!

 

1日目:10月2日(金)

 

快晴の旅のスタートはいつもより約30分遅い朝7時。通勤時はいつも宇都宮線の後方に乗り込むのですが、鉄ちゃんになると決めている旅の時だけはいつも一番前に乗り、見慣れた景色でも満喫することに決めています。

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通勤列車のど真ん中にただ一人カメラを構えて前方を凝視する年配の鉄ちゃんは、完全な異邦人(エトランゼ)。

 

大宮駅に早く着いたので早めにホームに上り大宮を通るたくさんの新幹線を観察。宇都宮、郡山、福島に停まる昔のやまびこタイプの新幹線は結構な混雑で嬉しい限りですが、各駅停車タイプのやまびこと私が指定券を持っているはやぶさは悲しくなる程にガラガラ。いつも、"大人の休日パス"の期間は常にどの新幹線も満員なのが信じられない程!

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はやぶさなのになぜかこまち型列車も連結しています

仙台からは各駅停車になるはやぶさを一ノ関で降り、短い乗り継ぎ時間を大船渡線へ急ぎます。

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我田引鉄大船渡線

この乗り換え時間には何となく記憶があります。どうやら2011年に病気後初の温泉復帰の旅で猊鼻渓に行った時と、列車名は変われど同じダイヤのようです。

zettaikaifuku.hatenablog.com

ここからはのんびりローカル線に揺られてお酒を片手に六角さんよろしく"呑み鉄"ができると楽しみにしていたのですが、2輌の列車のボックス席は全て誰かが乗っている状況。乗客のかなりの数はどうやら私と同じはやぶさからの乗り継ぎ客らしいのですが、年齢層はかなり高くどうやら皆大人の休日倶楽部パスを持った"じじ鉄とばば鉄"が殆んど。男一人旅はじじ鉄で、年配夫婦はどうやら”ばば鉄”に引きずられた"乗り鉄夫妻"という感じ。私の歩くスピードがかなり遅い分、同じ列車から次の列車に行くのが遅れるため、このじじ鉄・ばば鉄との"いい席の争奪戦"では、ずっと負け続きでした。

仕方なく最後部のロングシートに腰掛け、後ろの景色でも眺めようとしますが、最後部の窓にもじじ鉄が張り付いて写真を撮っています。でも、じじ鉄は体力が続かないことは共通なので、若い鉄ちゃんのようにずっと張り付いたままではなく、暫くすると疲れて座ってしまいますので、すかさず同じじじ鉄の私が最後部に張り付き、パチリ。

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9年前に降りた猊鼻渓駅でボックス席が空くかと期待しましたが、降りる人たちは予想ほど多くはなく、席はそのまま。

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この先に猊鼻渓が…

なべつる線とか我田引鉄鉄道路線の代表とされる大船渡線、確かに直線距離で行けばすぐ近い宮城県気仙沼までを2時間近く掛けてのんびりと走ります。気仙沼、釜石、宮古と今日行く港町は、昭和の時代の森進一の大ヒット曲「港町ブルース」の2番そのまんまのルート。但し、北から南下する港町ブルースの歌詞では「宮古・釜石、気仙~沼ぁ」と今日の行程とは正反対。でも不思議なくらいにこの曲の歌詞を覚えているので、何十年か振りに口ずさみながら、我ながら感動してしまいました。

気仙沼からはバスBRTに乗り換え。バスなので改札を出て、乗り場わかるかなぁ?なんて心配は全く無用で、何と改札も通らないホームの先にBRTバスの乗り場があるのです!

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BRT… 私的には"鉄道不通区間代行バス"なのですが、噂によるともう鉄道を復活させる気はないらしく、その意味でも"代行バス"とは呼べない代物とのこと。でもこの部分の鉄道が復旧しないと、三陸縦断鉄道は永遠にできず、我々(?)の悲願であった仙台発八戸行きの「特急さんりく」または五能線に負けない「リゾートさんりく」は、永遠に夢物語で終わってしまうのか?? ?こんな気分でBRTになんか乗りたくはありませんが、乗らなければ三鉄の始発駅盛には行けないので敵情視察も兼ねてと自分を無理矢理納得させます。
BRTはJR東日本が運行するので大人の休日パスでも乗れますが、やはりただのバス。

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線路のないホームから出発するBRT

定刻通り駅の中のバス停を出発してすぐに走るのは専用軌道。「これ、どう考えても単線の線路を取ってBRT専用軌道にしたやつじゃん!」と、思いっきり悲しくなります。でも専用軌道はすぐに終わり、そこからは普通の道路を普通に走る単なるバス。「ということは、列車の線路はどっかに残っているよね!?」と希望が持てるバス旅に早変わり、鉄道路線を探してあちこちをキョロキョロ。

でも、さすがに三陸。すぐに海が見えてきます。

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大船渡線から一緒にこのBRTに乗り継いだじじ鉄たちは、陸前高田の「奇跡の一本松」バス停で全員が下車。私はここには5年前に来ているので下車はしません。普通のバスとは違ってバス停はあまり多くはありません。でも大きな病院にはわざわざ回って行くし、学校前にも停まるのでバスと列車の「いいとこ取り」な感じ。鉄ちゃん的な感傷はともかく、地元にとってはいい交通機関なのでしょうね??
大船渡市内に入ると旧単線の専用軌道が続き、我々の夢を無残にも打ち砕いてくれます。

 

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バス専用軌道。どう見ても元単線の線路です。

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専用軌道がこれだけ長いと、もう列車の復活は無理だといくら私が贔屓目に見ても明らか。「特急さんりく」はやっぱり夢の夢で終わるようですね。

懐かしいトリコロールの三陸鉄道が見えてきたら、間もなく終点、盛駅

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BRTは盛駅でも専用ホームに到着。

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線路のない駅。悲しくなる景色です。

盛と言えば私が若い頃に熱中した”乗り鉄のバイブル”とも言うべき鉄道旅行ルポをたくさん旅してたくさん執筆された、レールウェイライター種村直樹さんが国鉄の全線を完乗した駅で、その意味でも私の40年越しの憧れの駅。今ではJRの盛駅こそあるものの線路はなく、在りし日の盛駅と種村さんを偲んで合掌。

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JR盛駅。でも、そこには線路はもうありません。

今日唯一の空き時間が2時間あるので昼食場所を探します。三鉄の駅で次のダイヤを確認しながら食事場所を聞くと、「サンリオのショッピングセンターにフードコートがある」というので5分程歩くと、さすがにサンリオではなくサンリアという名のショッピングセンター(というより中型スーパー)の中に、フードコートというより誰もいないラーメンコーナーがひっそりと。

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盛のフードコート??

味はそれなりでした。
ここでさすが長袖1枚では寒くなって、持参してきた上着を着ます。以降、この上着をずっと手放せませんでした。さすがはみちのく。

いよいよ三鉄の始発盛駅から三陸鉄道の旅のスタート。

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JR駅の横にある三陸鉄道駅。線路があるのはこっちだけ

まずは三鉄サイダーを飲んで、ようやく悲願が叶って待望の三鉄全線に乗れるんだ!と、気分をアゲアゲに盛り上げます。

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駅を俯瞰すべく鉄ちゃんたちが既に陣取っている陸橋に上がり、盛駅をパチリ。

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今度こそいい席を取ろうと折り返し列車が来る前からホームで待ち構えていると、突然後ろから声を掛けられます。振り向くとそこには何と大学時代のサークルの後輩が!!
本当に驚きました。旅行のクラブ(サークル)だったので、学生時代には大学の休み期間中にメンバーと旅先でばったり会うことは珍しくはなかったのですが、40年近く経ってまさか岩手県の盛で会うなんて!?
彼も大人の休日パスを使って友人と鉄ちゃんになりにきているということで、釜石まで嬉しい旅の同行者が出来ました!

三人で無事に海側のボックス席を確保していよいよ三陸鉄道の旅、出発進行!

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初対面の彼の友人とも”元鉄ちゃん”の共通話題で盛り上がりながら、初乗車の「南リアス線」の絶景にもカメラを構えるとても忙しい時間でしたが、お陰でとても楽しい時間を過ごせました。

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こういう偶然があるから、やっぱり鉄ちゃんの一人旅は死ぬまで止められないですね!

釜石で降りる彼らを見送った後はまるで”祭りの後”のよう。

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JRの匂いがする釜石駅。さすがは、元山田線!

国鉄山田線に乗るのは確か30年以上振り。
でも残念ながら徐々に日がが傾いて景色が夕景に。昔、井上ひさしの小説で有名になった吉里吉里駅。小説を読んだ頃の出来事がフラッシュバックします。

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列車は久慈行きですが、今日の宿がある宮古で下車し、駅前のビジネスホテルへ。go toの割引で3千円台のホテル代なのでカードで払うのも恥ずかしい程でしたが、たった3千円強を払っても千円の地域クーポンが貰えるのです!

夕食は近所の居酒屋のカウンターにて。値段も安いので「刺身三種盛り合わせ」のつもりで3つの刺身を頼んだら、とにかくすごい量。

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お店の人も「これ、一人で食べるの?」と訝しがるほどの量でしたが、さすがに三陸の魚介はみんな美味しいので東北の地酒を相棒にいつの間にか完食。お会計はこれだけ飲んで食べても4千円いかないという信じられない値段!

懐かしい岩手訛りをシャワーのようにたっぷりと浴びて、幸せな気分で初日の床に着きました。