麻痺からの脱却~日本二周目挑戦中!~

2010年に脳卒中で右半身麻痺に。でも、「絶対に諦めない」をモットーに現在は『日本2周目』に取り組んでいます。

九州旅行日記 その9 指宿温泉 砂蒸し温泉と森伊蔵


9月2日(日) 指宿駅到着~

指宿駅には定刻通り15時に到着です。
元々始発の鹿児島中央を出た後は、殆ど誰も降りていないと思われる喜入駅に停車しただけで終点の指宿についたわけですから、鹿児島中央駅を満員で発車した3両編成の旅客全員が、ここ指宿まで乗ってきたことになります。接続列車の案内があったかどうか正直記憶にありませんが、見る限り次の列車に乗り継ぎしそうな人は誰もおらず、全員が指宿駅で降りて指宿温泉の目指すホテルに向かうのでしょう。とにかく人の流れは全員が「温泉へ!」というイメージです。 
すごい指宿温泉のパワーですね!?

指宿温泉に来るのは私も初めてです。今回「指宿のホテルをどうするか」… 本来なら深く悩まなければいけないのですが… 妻には申し訳ありませんが、即決でした。
理由は、旅行業界にいると、「〇〇温泉と言えば… ××ホテル!」と若輩のころから教育され、教え込まれた定番ホテルが全国にはそれなりにあります。団体旅行やツアーで利用する大型ホテルが大半ではあるのですが、温泉地の名前とほぼイコールで知らず知らずに覚えてしまう(いや、覚えさせられてしまう)ホテルがあるのです。

でも私は、就職して間もなく30年。「〇〇温泉と言えば… ××ホテル!」というような有名な温泉&有名なホテルでほぼほぼ覚えたところには行った経験があり、「知っているけど初めて」という温泉は極めて残り少なくなってきているのです。
そんな私が昔から教え込まれたのが、「指宿と言えば、白水館」 そして、先般の焼酎ブームの中での合言葉で言えば、「幻のいも焼酎『森伊蔵』飲むなら、指宿の白水館」。ということで、今回のホテルについては、そんな白水館さんに敬意を表して迷わずに白水館さんを予約しました。

「団体・ツアーが多い巨大旅館は、個人で宿泊するとサービスが十分ではない可能性がある。なので個人で泊まる時は小規模旅館に限る!」ということは十分過ぎるほど承知をしていたのですが…
昔からの知名度とそのたゆまぬ営業努力に敬意を表したという言い方が正しいかと思います。

ゆっくり列車を降りて、人の波が収まるのをホームでじっと待っていました。妻はその間スタンプを押したりしています。
沖縄に行ったことがない妻にとっては、間違いなく自分史上日本で最も南にいる瞬間です。そんな興奮も少しはあるのかしら? などと勝手に想像してしまいました。
長崎から3日間お世話になった乗車券ともここでお別れです。本当に鉄ちゃんを大満足させてくれた九州の鉄道&列車には大感謝です。 
ようやく人の波が落ち着いた頃に、改札を出てタクシーに乗り込み、今晩の宿である白水館を目指します。でも、指宿駅の異常な混雑ぶりに、ちょっと嫌な予感もしていました。

白水館に到着、チェックインをしようとフロントに向かいますが…
まだ時間は3時半、ホテルのチェックインのピーク時間はまだまだのはずなのに… 
フロントは特急「いぶたま」に乗って来たであろう大勢のお客様で溢れかえっているではありませんか!? 確かに、温泉地に特急が3時に着けば、当然の行為として「まずは、ホテルにチェックイン。」ですよね!? おまけに、混雑するので有名な列車から、「指宿と言えば…」という超有名なマンモスホテル… 「混まない」筈がないのです! 私の認識が甘かった!
チェックインが済んだのが15分後、部屋に案内してくれるスタッフが来るまで、更に20分以上は待たされた気がします。

さすがに巨大なホテルだけあって、部屋まではかなり遠く、妻は「迷子必至!」と断言するほどの迷路です。確かにスタッフさんに連れて行ってもらわないと部屋には入れません。
予約していたのは和室でしたが、通された部屋は和室+ツイン+応接のスイート。料理もちょっと高いものを予約していたので、少し高い料金を払った客の特典として、部屋をアップグレードしてくれたようです。結局、応接室のソファーでずっとくつろぎ、ベッドで寝ましたので、滞在中和室は単なる荷物置き場で、全く利用しませんでした。
外はリゾート温泉らしくプールがあります。以前の私だったら早速プールに飛び込んでいたに違いありません。(本当に勿体ない!)
20120902_153729-001.jpg
さて、この後は本日の最大のメインイベント、指宿温泉を全国的に有名にしている「砂蒸し温泉」を楽しむ予定です。からだの上から温泉で蒸された砂を掛けられるという、日本では指宿温泉(とその周辺)にしかない独特のアトラクションです。
指宿温泉に泊まって、砂蒸しを体験しないなんてことはいくら身障者の私であっても考えられず、普段は「出来るだけ人に迷惑を掛けずに、自分だけで出来ることだけをやる」ことが基本ポリシーの私でも、この砂蒸しだけは、「せっかくの機会なので、人に介助をお願いしてでも是非体験したい!」と主義を曲げてでも体験したいと、熱望していました。

でも、砂蒸しのルールというか楽しみ方を知らないので、早速部屋の係の方に教えていただきます。基本的な流れは
・大浴場と共用の脱衣場で全裸になり、その上に砂蒸し専用の浴衣を着る。
・砂蒸し場に移動 (ここで妻と合流 砂蒸しは男女一緒)
・砂蒸しを体験 指定された場所に寝て、係の人が上から顔以外の全身に砂を掛けてくれる。
・終了後、再び男女別になり、浴衣を脱いでシャワーで砂を落とす
・大浴場入浴

という流れなのだそうです。流れを聞く限り、私にとって問題になりそうなのは
・片手なので浴衣の紐を縛れない(病気以来、旅館でもスウェットで過ごしています)
・装具を外すと、移動の時や起き上がる時に不安  

などです。でもここ(指宿)まで来たのですから、これはもうトライするしかありません。なので部屋係の人経由で砂蒸しのフロントの方にヘルプのアポイントをお願いします。「30分後ならば良い」という返事をいただきましたので、その時間まで部屋で大人しく待つことにしました。

そして、指定された時間に勇んで大浴場に向かいます。部屋から歩くこと10分強… 本当に遠い遠い大浴場でした。
でも「砂蒸しの受付」には私の連絡はちゃんと入っています。この辺はさすがに一流ホテルだけのことはあります。
入り口で妻としばしのお別れ、更衣室でスタッフの方にお手伝いいただいて砂蒸し専用の浴衣に着替えます。そして足の装具をつけたままにするか外すかについてはちょっと迷いましたが、砂蒸しの会場までは多少距離もあるので、結局装具は付けたままにすることを選択。代わりに、装具の中に砂が入らないようにと、ビニール袋で二重に装具全体(と足)をガード、万全を期すことにしていたきました。

そして、ちょっと長い通路を歩いて砂蒸しの会場へ。先に砂蒸し用の浴衣に着替えた妻は、手持ちぶさたで待っていてくれています。
「砂蒸しも意外と待ち時間がある。」と聞いていたので覚悟はしていましたが、あれだけたくさんいたチェックインのお客さんはまだ砂蒸しには来ていないようで、我々を含む一列分の五人が揃った段階ですぐにご案内されます。

横になるや否や、係の人が手際良く全身に砂をかけてくれます。
周囲から「熱い!」という声が聞こえてきて、確かに熱いのですが、「目安は10分から15分。我慢できなかったら出てもいいですよ!」と言われて、とりあえず最低でも10分は頑張ろうと、「熱い!熱い!」としきりに言っている妻と励まし合います。

顔以外の全身が砂に埋もれていて身動きが取れない中高年夫婦の姿は、決して見栄えの良い風景ではありません。でも、「記念写真いかがですか?」と言われて、つい「お願いします。」と言ってしまいました。思えば旅行で記念写真を買ったのは、人生初体験のような気がします。

最初は「10分… 無理じゃない?」とさえ思われるほど熱く感じた砂の温度ですが、写真を撮られたりするうちに徐々に慣れてきます。大きな柱時計を見ながら初体験の砂蒸しを体験していますが、あっという間に10分を回り、すぐに15分経ってしまいました。
折角温度にも慣れた時分なので、「あと5分ぐらい頑張ろう」と思った瞬間、係の人が「はい、15分経ったのでちょうど良いでしょう。出て下さい。」と言って体の上の砂をどけてくれ、初めての砂蒸し体験は終了になりました。

終了後は再びスタッフさんにお手伝いいただき、専用の浴衣を返却してシャワーを浴びます。その後、温泉に入ろうと脱衣場に戻り、着けていて正解だった装具を外します。でも、「いざ大浴場。」とよくよく見ると大浴場には脱衣場から階段を下りねばなりません。散々お世話になった係の方にこれ以上ヘルプをお願いするのは、いくら図々しい私でも無理な状況です。
でも改めて全体を見渡すと、先程砂を洗い流したシャワーの外に露天風呂があり、手すりもあるようです。
急遽本日の目標を露天風呂に変更し、今度は装具がないので慎重に再びシャワー方面に向かいます。

外に出て、手すりを使いながら慎重に露天風呂に浸かります。勿論、この露天風呂は貸し切りではなく共用の露天風呂。つまり昨日の大浴場に続いて、公衆露天風呂まで2年以上振りに復活したことになります!
でも実はその時には、この露天風呂に他の入浴者はゼロ。露天風呂も先日温泉復帰を果たした岩手・花巻の部屋にあったお風呂よりちょっと大きい程度でしたので、感動も中くらいでした。
無事に露天風呂を満喫、部屋に向かいますが、予想通り妻は途中で迷子になって館内を彷徨っていました!

旅館の楽しみと言えば、何と言っても夕食です。夕食は、これも迷子になりそうなルートを通って6人は入れそうな広い個室でいただきます。
今回の夕食で、2年以上振りに焼酎に復活することを決めてました。
倒れる前の私の晩酌の定番は、「いも焼酎」。真夏以外はお湯割りをこよなく愛していました。焼酎は、正直そこまで「飲みたい!」という気持ちは起こらないものの、自分の復活のマイルストーンとして、今回の旅行で復帰する決意を固めていました。
そして、いも焼酎に復帰するのなら名も知らないお酒ではなく、最初の一杯はやっぱり「森伊蔵」にしたいと決めていたのです。
ドリンクメニューを見ると森伊蔵にも数種類あり、お勧めはグラス一杯2100円のものだそうですが、「味より、飲んだという事実」ということで、グラス一杯1000円弱の一番安いものにしました。
でも、それでももちろん「森伊蔵」。確かに味は昔味わったことのある「森伊蔵」でした。(というより、そんな気がします。正直、あまり覚えていません!?)
20120902_184023.jpg
 
新人の仲居さん、最初は矢継ぎ早に料理を運んできて、大きなテーブルでも料理が溢れるぐらいになりました。
「配膳が早すぎる。」というと、今度は一転して料理が完全に無くなっても、全く音沙汰がありません。
でも流石に一流ホテル、味はどれも格別でボリュームも相当なものがありました。
20120902_183340-001.jpg
20120902_183941-001.jpg 
 
特に「黒毛和牛のしゃぶしゃぶ」は美味しくて写真撮るのも忘れたくらいに美味でした!

でも注文を一つ。これだけ高級な食材で美味しいコースなのにメニュー(お品書き)がありません。なので、あと何品出てくるのかがさっぱりわからず、全部食べていいのか少し残すべきかペースが掴めませんでした。(ボリュームが莫大だったのも事実です。)
また、「これ、何ですか?」と新人ではない仲居さんに尋ねたところ、「さぁ~、メニュー変ったばかりだから、私たちもわかんないんですよ…!」と笑って答えます。フレンドリーな接客という意味では悪くないのかもしれませんが、プロとしては失格ですね。
確かに「9月のメニュー」はまだ2日目、しかもホテルによって土曜日のメニューは平日(日曜日は平日扱い)メニューとは違うところも多いので、9月の平日メニューとしてはこの日が初日だったのは判ります。だからと言って「わかんない」と笑って言えば許されると考えているのはとんでもないことです。調べて後で回答してくれることを期待していましたが、その後も質問されたことをすっかり忘れたかのように返事をする気はないようです。このあたり、やっぱり「だから団体用大型ホテルは…」と言われても仕方がないのかもしれません。

でも全体的な食事は大満足&大満腹。九州旅行最後の夜も更けてゆきました。