麻痺からの脱却~日本二周目挑戦中!~

2010年に脳卒中で右半身麻痺に。でも、「絶対に諦めない」をモットーに現在は『日本2周目』に取り組んでいます。

7、九州一周の旅<その3:大分県(後篇)>


ブログを書くのが毎週日曜日だけになってしまうと、この先の旅行記を書くのがずっとずっと先のことになってしまい、本当に楽しかった旅行のことをどんどんと忘れてしまいそうな気がしています。
なので、1年以上振りに通勤列車での往復に旅行記を書くことにしました。通勤列車では相変わらず座れないのですが、ドアのところに寄り掛かれればスマホへの入力はできます。
適当なところで切って投稿するつもりなのですが…  でも、通勤時に書くと、ついつい余計なことまで書いてしまい、冗長になってしまうようです!

4日目:9月3日(木)

この日の天気予報は、午前中は雨予報で、午後から回復という予報でしたので、午前中は洗濯でもして過ごそうと、ネットで別府市内のコインランドリーを探したところ、ホテルすぐ裏にコインランドリーがあることを発見し、ホテルをチェックアウトせずにまず洗濯で過ごしました。午前中はずっと雨予報でしたが、幸い乾燥のタイミングで雨はかなり止んでくれましたので、ほとんど時間をロスすることなく大分県2日目の観光をスタートさせることができました。

この日の宿泊は別府からすぐ近く(車で走れば1時間以内)の由布院温泉を予約しています。2日連続温泉に泊まるなんて、この旅らしくない贅沢三昧ですが、「おんせん県」と称している大分県に敬意を表したのと、この旅の計画時に、「九州を代表する由布院温泉か黒川温泉のどちらかには、何としても一泊はしたい!」と思い、さまざま検討を重ねましたが、結局黒川温泉に泊まるいいプランが作れなかったため、贅沢ではありますが、おんせん県と九州全土を代表しての由布院泊まりになったのです。
でも、本当の理由はネットで大分県の「ふるさと旅行券」のような補助金を見つけて、由布院の割といい旅館が五千円オフで泊まれるということを知ったことが最大の理由なのでした。
ですから今日は、この辺りをゆっくりと観光して、出来るだけ早く由布院温泉の(この日本一周の旅にしては)高級な温泉旅館を満喫しようと考えていました。

気に入った別府の「新しいタイプの温泉ホテル」を出て、まずは大分市方面に車を走らせます。別府~大分間の国道と言えば、海沿いを走るとにかく広い別大国道。勿論、初めて走る道ですが、何故か懐かしい風景です。そう、この道は「別府大分毎日マラソン」のメインルートとして、何度となくテレビで見た風景なのです!
私のイメージでは、この道の主役はいつも宗兄弟。(古っ!) 二人とも髪を振り乱しながら、この海沿いの国道を並走する姿が、この道路のイメージなんです。

さて本日最初の観光地は、この別大国道沿いの高崎山自然動物園高崎山と言えばこのちょっと前にイギリスの王女にあやかった「シャーロット」と名付けられた猿で大変に話題になりましたので、興味本位&話題に敬意を表しての訪問です。

とは言うものの、ネットの書き込みを見る限り、「猿がたくさんいすぎて、どれがシャーロットちゃんだか全くわからなかった!」という意見が圧倒的で、「一番可愛い猿がシャーロットちゃん」という書き込みもありましたが、人間の審美眼すら怪しい私ですから、猿の審美眼なんて全くあてにはなりません。
なので、「1000匹以上もお猿さんがいれば、どれがシャーロットちゃんだかわかる筈もないけれど、それでも話のタネだからとりあえず行ってみよう!」ということにしました。

でも妻は、日光などでよく見る猿は結構大きくて怖いのだそうで、あまり乗り気ではありません。でも高崎山の猿は小さい猿だと聞いたことがあったので、妻の不安を私が強引に押し切った格好です。

高崎山麓からロープウェイに乗ると、噂通り手のひらサイズ(と書きましたが、実際はもうちょっとは大きい)の可愛い猿が、本当に凄い数で飼育されています。お猿さんたちは檻には入っておらず野生のまま高崎山で暮らしているようで、言ってみれば、「猿の生活地帯に、人間が檻にも入らずに乱入している。」状態なのでしょう。

そして、何という幸運なのでしょう! メインの見学場所では猿に詳しいガイドさんが、さまざまな猿の生態を案内をしてくれているのですが、ガイドさんのすぐ横にちょこんと座っている親子猿こそ、何とあのシャーロットちゃんと母親猿なのだそうなのです!
これを聞いた人間どものお客さんたちは、私も含め他の猿には見向きもせずシャーロットちゃんだけをパチパチと撮り続けています。肝心なシャーロットちゃんといえば、最初は母親に抱かれて目を閉じていましたが、その後は顔をあげてしっかりとカメラマン達の期待に応えてくれたのです!
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(この、抱っこされている子ザルが、紛れもなくシャーロットちゃんです!!) 
その後、食事の時間になると本当にたくさんの猿が集まってきて、迫力十分です。
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行こうかどうしようかかなり迷っていた高崎山でしたが、結果は行って大正解でした!

大分市内は素通りして、次に向かったのは臼杵、私が本日の観光では一番楽しみにしていた「臼杵石仏」を見るためです。

臼杵石仏という名前を知り、その場所に秘かに憧れたのは、39年も前の私が高校1年生の時です。高校1年生の夏休みに、その年の冬に亡くなった父の初盆で福岡に行き、福岡から阿蘇に初めての一人旅をして、阿蘇ユースホステルに宿を取りました。ユースホステルで一人旅の大学生の男性&女性と意気投合し、その翌日には三人で仲良く阿蘇山のハイキングを楽しみ、そんな経験が私をすっかり旅好きにさせる最初のステップになったのです。
そのお二人がどんな方々で、阿蘇のハイキングでどんな話をしたのかは全く覚えてはいないのですが、駅で別れる直前に女性が「今から臼杵に行って、明日は石仏を見ます!」と言ったので、しばし臼杵と石仏の話で盛り上ったのを覚えています。
とは言うものの、当時16歳だった私には臼杵にも石仏にも全く知識がなく、二人の話を黙って聞いているだけでしたが、その時の話は妙に心に残り、そのお二人の憧れも短時間ですっかり私にも伝染したようで、「私も、いつかは臼杵の石仏を見に行きたい!」というのが私の秘かな憧れになったのです!
妻にその話をしたら、「その女性、好きだったの? 美人だった?」など的外れなことを言います。今となっては、顔は勿論美人だったかどうかなんて全く覚えてはいないのですが、寅さんのように「旅先で女性を好きになる」ことが、16歳だった私の身にも起きていたのかも知れませんね。

39年越しの念願である臼杵石仏は、山の麓から山沿いに石を彫った石仏が点在しています。入場ゲートからは一方通行の登り坂なのですが、登りの殆どの坂と階段には右側にしか手摺がなく、右麻痺の私にはちょっとした試練です。でも、少なからずあった階段も、さほどきつい階段ではなかったので何とか登ることができました。でも右麻痺の方は、お願いして反対から回った方が、少しは楽になるかもしれません。

点在する石仏群は、どれも凄い!と思わせるような石仏ばかりでした。
どの石仏もいきいきとして優しそうな顔をしていて、今にも動きだしそうにも見えるのです。「よくこんな場所にこんなにたくさん立派な石仏を作ったねぇ!?」と、妻は感心しきりでしたが、自然の石を彫った石仏なのに、どの石仏も表情が多彩で、私はむしろそっちの方に驚かされました。
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仏さんの顔はよく誰かに似ていると言われます。「この石仏は(知り合いの)誰に似ているかしら?」などと考えながら歩いていると、ある石仏の顔が一瞬39年前のあの女性に見えたのです!
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実際、突然顔を思い出すなんてことはないでしょうが、青春時代の甘酸っぱい思い出が甦ったようでちょっと嬉しくなりました。

石仏を満喫し、少し遅くなりましたが大分での昼食を楽しむことにします。大分の名物はたくさんありますが、海産物の名物と言えば何と言っても「関サバ」と「関アジ」です。でも、夕べのホテル内の居酒屋には関サバも関アジもなかったので、この日のお昼に食べないと、今晩の由布院温泉での夕食には恐らく出ないと思われるので、食べ損ねる可能性が大です。
関サバ関アジの本場である佐賀関漁港近くのお店を目指しながら、「関サバか関アジの、どっち?」と料理ショーのような究極の選択を求めていました。サバ好きの私は早くから関サバに決めていたのですが、勿論アジにも未練がないわけではありません。妻に至っては、五分ごとに、「アジにする!」と言ってみたり「やっぱり、サバ!」と中々決まりません。
決まらないうちに店に着き、改めてメニューを見ると、今までは高いので我々の選択肢には入れていなかった「関サバ・関アジ御膳」がメニューのど真ん中に鎮座して、その存在感を強烈にアピールしています。
一人3千円を越える出費は確かに貧乏人の我々には辛いのですが、ここまで来るともう清水の舞台から飛び降りざるを得ないような不思議な心境になり、結局二人とも「関サバ・関アジ御膳」をオーダーしてしまいました。
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実際、予想通り刺身は多くはなく、「3千円以上払って、これだけ?」って感じでしたが、確かにサバもアジもコリコリとしていて激ウマだったことは確かです。でも、流石にこの値段では「また来よう」とは思えませんでした。

この日の午後の観光は、実は出発前から結構悩んでいました。由布院方面に戻りながらの観光地としては、景観が美しいという耶馬溪にも行ってみたいし、町並みの観光として日田にも行ってみたいし、また由布院の町並みをのんびりと観光するという手もあり、どこに行くか決めかねていたのです。

お昼を食べ終わった時点で既に2時を回っていたので、午後といってももうあんまり観光の時間はないのですが、とりあえず耶馬溪方面に行ってみようと、高速道路にアクセスしました。
耶馬溪に行ってみたくなったのは、昨日午前中に訪問した福沢諭吉記念館でのこと。「耶馬溪の環境破壊に心を痛めた福沢諭吉翁が、耶馬溪環境保護に乗り出し、私財を投じた!」ということを知り、100年以上前のことなのに… と感銘を受け、ますます耶馬溪に行ってみたくなったのです。

でも、いくら由布院の方向とは言え、耶馬溪は住所で言えば昨日大分で最初の観光をした中津なので、結構大きく戻ることになります。おまけに、もう2時を回っているので、耶馬溪を全部観光して、あまり遅くならずに由布院の温泉に浸るのは、どうやら難しそうです。なので耶馬溪では行けるところまで行き、適当なところで引き返すことにしました。

高速の由布院IC通過し、耶馬溪に近いICに降りてからも、耶馬溪のみどころまでは結構ドライブのしがいがありました。
おまけに、耶馬溪は近くにみどころが集中している観光地ではなく、かなり広い範囲に点在しているので、着いたと言ってもそこで観光を終われるわけではないのです。

最初のみどころは、”深耶馬溪”の中心にある一目八景。先月に行った山梨の昇仙峡のような巨大な岩が聳えています。
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その後は、耶馬溪の名前通りの渓谷を走り、耶馬溪ダムへ。噴水は見事なものの、人工物のダムで感動することはできませんでした。紅葉の時などならいいんでしょうが…
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耶馬溪で一番有名な青の洞門。江戸時代に旅の僧が、手彫りで彫ったという洞門で、見学にはトンネルを歩いて往復しなければ行けないらしく、私の足では往復で1時間以上は絶対にかかりそうなので、4時を回っているこの時間から行くのは無理そうです。なので付近だけドライブして青の洞門周囲だけ眺めて満足することにしました。
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それ以外にも近くには石仏で名高い羅漢寺もあり、ここも行きたいところの一つでしたが、国東半島同様にバリアフリーの情報がなかったのと、少しづつ暗くなろうとしている空を恨めしく眺めながら、泣く泣く断念しました。
耶馬渓中津市とは言え、この日も勿論”から揚げ”には縁がありませんでしたので、中津と耶馬溪にはやっぱりもう一度来なければなりませんね。この日行けなかった日田にもです!

由布院の宿は私の由布院のイメージ通りでした。御三家などの名旅館ではないので、部屋は離れ形式ではありませんでしたが、他の宿などから隔絶された広い敷地の中に立つ低層階の宿は、まさに私の由布院のイメージそのものでした!

中庭を通って行く温泉もイメージ通り。お風呂などでも他のお客さんに遭遇することはあまりなく、由布院温泉を独占したような気分になりました