6日目:10月8日(木)
といいながらも、昨日坊ちゃん列車をすぐ近くでじっくり見られて、これで今日一日の観光に使える時間が増えたのが、本音としてはちょっとだけ嬉しかったりもしています。
まず訪ねたのは松山城。このお城は、日本全国で12城、四国に4つ残る「江戸時代から残る天守閣」のお城で、今回の旅では丸亀城に続いて2つ目の”現存12城”です。松山城は、市内中心部にあるお城なのに、岐阜城のように小高い山の上に聳えているので、これも岐阜城と同じくロープウェイで登ります。
ロープウェイで登った上から眺めた松山市内。やっぱり四国最大の都市だけはある大きな街です。
松山城は、やはり江戸時代から残っているお城だけあって、威厳というか格式がありますね。
松山城の近くに、「坂の上の雲」ミュージアムがあるというので、立ち寄ってみます。日露戦争で活躍した軍人である秋山兄弟と、その友人正岡子規との3人の物語で、原作は司馬遼太郎ですが、5年ぐらい前までNHKが三年越しの大作大河ドラマ(?)として、年末限定で大河の時間帯に放送していて、そのドラマでこの坂の上の雲を知った私も、この3名の織り成すストーリーに興味があっての訪問です。
らせん状の作りのユニークなミュージアムでしたが、3人の功績中心に展示されていて、当たり前ですがNHKの大作ドラマ関連の展示は一つもなく、その意味では少しだけ期待外れでした。秋山兄弟役の阿部寛と本木雅弘、子規役の香川照之のエピソードぐらいはあるかなぁ? と薄々期待していたのですが…
ミュージアム正面には、緑の中に洋館が立っています。「大正時代に建てられた洋館で、今でもコンサートや展示などで使われているのですよ!」と近くにいたミュージアムスタッフの方が教えてくれました。でもここは松山一の繁華街のすぐ近くです。大都会のこんな近くに、こんな緑たっぷりな山と、今でも活用されている洋館と、江戸時代からのお城と、そして(道後)温泉があるなんて… 松山の人たちが羨ましかった瞬間でした。
松山一の繁華街である大街道の喫茶店でしばし休憩。窓の向こうには市電の線路が見えています。「そういえば、坊ちゃん列車がちょうど今頃松山駅を折り返して来て、道後行きが通るかも?」と思ったその瞬間に意外と早いスピードでミニSLが目の前の線路を駆け抜けていきます。勿論、カメラを構える余裕も全くなかったのですが、とりあえず今日もまたちょっとだけでも坊ちゃん列車が見られたのでラッキーだったと思うことにします。
松山の観光はこれにて終了し、今日は愛媛県南部の行きたかった2つの町の観光に向かいます。坊ちゃん列車に乗車していたら、車をホテルに預けてまた取りに戻るなどかなり時間をロスすることになり、お昼過ぎまで松山にいなくてはならないので、この2つの町をゆっくり見るのは厳しいかなぁ~ と思っていたので、乗車を諦めたことにより2~3時間の時間的余裕が出来たことになります。
行きたかった2つの町とは、「内子」と「大洲」。共に風情たっぷりで昔から憧れてはいたものの行く機会がなく、自分の中での「永遠の憧れであるマドンナ」のような存在の町でした。
まずは美しい町並みが残っている内子を訪ねます。
内子の町なかに入る前に、「行きたいけれど、恐らくは無理だろうなぁ~!」とほぼ諦めつつも念のためメモしておいた、「屋根付き橋」に立ち寄ってみることにします。(これも、坊ちゃん列車を諦めたお陰です。)
でも、屋根付き橋までの道は思っていたより結構時間が掛かり、来たことをちょっと後悔し始めた頃にようやく辿り着きました。
”マディソン郡の橋”が流行った頃、この小説に熱狂した私は、舞台となったアメリカアイオワ州のデモインにどうしても行きたくって、営業マンとして仕事というより自分の趣味のために、ここに行くツアーを一生懸命売り込みに歩いたことを懐かしく思い出しました。さすがに他に行くべき理由もなく、また行くのにも結構大変な場所だったので、簡単に”よし、行こう!”と仰ってくれるお客さんも残念ながらいなかったので、夢は夢のまま終わってしまいました。実際に行けたとして、「”マディソン郡の橋”も屋根付き橋とは言え、所詮こんな程度の橋だったんじゃないかなぁ~?」なんてことを思いながらこの屋根付き橋をのんびりと眺めていました。
内子町に入り、お目当ての昼食に向かいます。内子でというかここから宇和島までで楽しみいしていたのは、「南予風の鯛めし」です。愛媛名物の鯛めしと言えば、鯛をごはんと一緒に炊く鯛めしが一般的ですが、南予風の鯛めしはごはんと一緒に炊くのではなく、熱々のご飯の上に鯛の刺身と生卵を載せてたれをかけるというものらしいのです。私も愛媛には何度か来ていて、その都度炊いた一般的な鯛めしは何度も味わっているのですが、この南予風は食べたことがなく、楽しみにしていたのです。
もう一つの愛媛名物である「じゃこカツ」も一緒に注文します。はじめて愛媛に来た20年以上前、じゃこ天の信じられないくらいの旨さを知り、以来すっかり愛媛のじゃこ天の大ファンになった私は、以降四国に来るたび(&地元でも見つけ次第)にいつもじゃこ天を食べ続けてきたのですが、今回「じゃこカツ」の存在を知ったので、試してみないないわけには行きません。
味については、「南予風鯛めし」については予想を超えた”まいう~!”で、「じゃこカツ」については、「やっぱり、じゃこ天の方がいいや…」 でした。
鯛めしに大満足して、町並み保存で名高い内子の町並みを散策します。まずは昔からの劇場である内子座に行ってみます。大正時代にできた劇場ですが、いまだに現役で使われている施設とのことで、内部の見学もできるようでしたが、何となくその気になれず”今度、ゆっくり来ますね。”と挨拶するだけに留めます。
内子の観光と言えば町歩き。明治の町並みと称される落ち着いた懐かしい雰囲気の町並みをゆっくりと散歩します。「寅さんが歩いてそうな風景だね…」と言いながら散歩しますが、実際には寅さんはここ内子には来ていないようです。
何組かの観光客は地元のお年寄りのボランティアガイドに案内されながら、この魅力ある街を散策しているようで、我々もそうできればよかったのですが、この日本一周の後半は、やはり最初の頃に比べて準備や計画に割ける時間が少なくなっているため、そこまでの細かい計画は立てられずにいます。九州から帰って来て、10日余りでこの四国に来たので、別の意味ではとてつもない贅沢を楽しめている訳ですから、そこまでの準備が出来ないのはそれはそれでやむを得ないことなのだろうと思っています。
でも、内子にはもう一回来て、内子座も町並みもそして他の屋根付き橋も、ゆっくり見たいと思いました。
見たかった町のもう一つは大洲。この大洲は、寅さん映画の「寅次郎と殿様」の舞台で、寅さんシリーズには珍しくロケ地がかなり大々的にフューチャーされている作品&ロケ地は柴又と大洲だけ(冒頭の夢のシーンを除く)という、とにかくマドンナより大洲5万石の殿様である嵐寛寿郎がメインのような作品でした。
私が大洲という地名を強く意識したのも、当然この寅さん作品によってなので、今回その意味では一番楽しみにしていた町で、「四国に行く前に、この作品だけは見てから旅立とう!」と思っていたものの、結局見ることが出来ないままに旅立ってしまったという情けなさです。
「大洲のお殿様」が出てくる作品なので、何はともあれまずは大洲城を目指します。大洲城は再建されたお城ですが、そのお城の威容を見ても何故か既知感はありません。「映画には写ってなかったのかなぁ?」と思い、帰宅後しばらくしてからようやくその作品を見直してみましたが、城跡や石垣のところは写っていましたが、やはりお城そのものは映像にはありませんでした。
大洲と言えば、寅さんより有名なのは”おはなはん”。伝説の高視聴率のNHK朝ドラだったので、妻も当然見ていて覚えているらしく、”おはなはん通り”と名付けられたこの通りを、懐かしそうに歩いています。とは言え、約50年前の朝ドラですから、本当に覚えているかどうかは謎ですが… 因みに、当時小1だった私は名前は憶えていても、詳細は全く覚えていません。ましてや、大洲の町並みなんて…
この先の細い道のデジャヴ感も寅さんです。”記憶にある!”とパチリとシャッターを押しましたが、後で見返すと確かに、このあたりが写ってました。
因みにこの角に、”東京ラブストーリーで、リカという人が別れの手紙を出したポスト”があって、今ではそっちの方が有名だそうなのですが、病気になるまで”月9ドラマ”などには全く縁がなかった私なので、全くの門外漢です。
事前に寅さんを見ていれば、河原や橋などもっと見たい場所もたくさんあったのですが、妻がちょっと風邪気味の気配があるということで、無理をせずにとりあえず今日の宿泊地である宇和島に向かい、ホテルにチェックインして風邪薬を買いに一人で宇和島の街へ出ます。
駅前のアーケード街の殆どのお店にはシャッターが降りており、「これ… まさか、シャッター商店街??」と空恐ろしくなりましたが、実はこの商店街の大半のお店は”木曜定休”で、今日は大半のお店が定休日だっただけみたいなので、一安心です。
宇和島と言えば鉄ちゃん憧れの終着駅なので、入場券を買って宇和島駅をじっくり眺めに行ってみます。1番線にはディーゼル特急宇和海が停まっています。大洲、内子などを通って松山まで行く特急列車で、このまま乗って戻って見たくなりました。
線路が途絶えた終着駅の風情は、やっぱり郷愁を誘います。
宇和島での楽しみは何といっても郷土料理。妻の風邪が心配でしたが、とりあえず”メシ”というと少しは元気になったみたいで、狙っていた郷土料理のお店に行きます。
〆の料理、妻は勿論昼に続いて”南予風鯛めし”ですが、私は鯛めしも食べたかったのですが、同じく名物という謳い文句につられて”さつまめし”を選択。鯛めしも絶品だったようですが、このさつまめし(因みに、薩摩との関連はないようです)も驚愕の旨さでした!
明日、もう一泊してこれらの旨いもんをもう一回食べ尽くしたいと思いました。
大洲の殿様の邸で、寅さんは毎晩旨いもんを食べたんでしょうねぇ~!?