麻痺からの脱却~日本二周目挑戦中!~

2010年に脳卒中で右半身麻痺に。でも、「絶対に諦めない」をモットーに現在は『日本2周目』に取り組んでいます。

親父の一番長い日

 
「親父の一番長い日」という曲は、さだまさしさんが1979年にリリースした曲です。当時「雨やどり」や「関白宣言」などでさだまさしさんは人気絶頂だったため、12分という(当時としても)異常に長い曲でありながらも、オリコンチャートで1位を獲得した曲なので、ご存知の方も多いと思います。

曲の内容は、娘(妹)が生まれてから成長し、その成長ぶりに父親が一喜一憂するさまを、兄貴の視点で描いている曲です。
曲のクライマックス「親父の一番長い日」とは、成長した娘が結婚相手を家に連れて来た日のことを描いています。詳しく説明するより曲を聴いていただいた方が早いのですが、12分という超大作曲なので全部聞くのは結構大変なのと、You Tubeなどで誰かがUPしたその曲を貼り付けても、最近はプロの歌は著作権などの関係などですぐに削除されてしまうようなので、曲の貼り付け自粛しこの場面の歌詞のみご紹介したいと思います。
(これも、著作権的に言えばグレーというかアウトなのでしょうが…)

ある日一人の若者が我が家に来て、「お嬢さんを僕に下さい」と言った。
親父は言葉を失い、頬を染めうつむいた いつの間に綺麗になった娘を見つめた。
(中略)
「わかった娘はくれてやる。その代り一度でいい、奪って行く君を、君を殴らせろ!」と言った。 
親父として mm…。
(後略)

当時からさださんのファンであった私は、勿論発売当時からこの曲を聴いていましたが、当時私は大学生で、「”娘をくれてやる”なんて、女性は親父の持ち物じゃないのになぁ~!?」 なんてことを思いながら聴いていた記憶があります。
その後、自分が「お嬢さんと結婚させて下さい。」と言いに行った約30年前にもこの曲のことをちょっとだけ思い出し、「一発殴られても、それで結婚を許してくれるなら安いもんだ! 一発殴るぐらいで親父さんの気が収まるのなら、一発とは言わず右の頬と左の頬を交互に差し出そうかな!?」なんて、真剣に考えたものです。
勿論、私が殴られることはありませんでしたが、その日親父さんの機嫌が悪かったことは、今だによく覚えています。

娘が生まれた後は、娘の成長のたびに、時折この曲を思い出すことがありました。我が家は長女で兄貴はいないのですが、さださんの唄う「兄貴の視点」で自分が娘のことを見ているような錯覚に陥る時もあり、長い間この長い曲と「つかず、離れず」付き合っていたような気がします。

そして先週、私にとっての「親父の一番長い日」が、遂にやって来てしまったのです!!

娘も間もなく28才になり、そろそろ周囲も真剣に結婚を考える年になってきているのですが、娘を持っている父親の方にはわかっていただける方もいるとは思いますが、父親としては「娘の幸せな結婚を願う」気持ちがあるのは勿論なのですが、反面「娘にだけはいつまでもこのままそばにいてほしい」という気持ちがあるのも(私だけかもしれませんが)偽らざる正直な事実で、きわめて複雑な心境です。

さださんの曲の「親父」さんは、どれだけ娘(妹)から事前に情報収集をしていたのかは知りません(??)が、我が家では娘から事前にこの話を聞いていましたので、心の準備はそれなりにしていた積もりではあります。
事前に聞いていた相手の情報では、相手のプロフィールには文句のつけようがありません。
年は相手が1つ上、一流大学を卒業して、日本人の大半が知っている超大企業に勤めているそうです。(公務員ではありませんが、ある意味では「公務員並みに硬い」会社です。)相手の家は埼玉ではないものの同じ首都圏の神奈川で、我が家よりは裕福な家庭らしいのですが、「釣り合いが取れない」ほどの高貴な家でもなさそうとのことです。おまけに彼氏は次男… その意味でも余計な心配をする可能性も少なそうな感じです。
 
妻などは「凄いじゃん!、よくやった!」的に全面的にWelcomeの姿勢です。妻は「文句ないでしょ? 一緒に歓迎しようよ!?」という感じですが、娘のことが異常に好きな親父としては、心から「歓迎」する気にはどうしてもなれないのです。
偽らざる心境としては、「人生の最後の方に現れた、”生涯最大で最強の恋敵”と対峙しなければならない勝ち目のない弱者の心境。」と言えばわかっていただけるのでしょうか??

現在神戸に住んでいて、”休日は稼ぎ時”の平日休みの会社に勤務している娘としては、ようやく作った祝日の休みなので、当日は昼に彼氏を我が家に連れてきた後、夕方からは彼氏のご両親に娘がはじめて挨拶に行き、その日のうちに神戸に帰る「超ハードスケジュール」な一日で、「親父の一番長い日」というよりも娘にとっても「一番長い一日」なのかもしれません。夕方の「娘の先方へのご挨拶」については、誰よりも娘を溺愛する保護者としては、「私もついていきたい!」と思うのも、こちらも偽らざる正直な心境です。
「この結婚話がまとまらなければいい」なんていう気持ちは正直微塵にも思わないのですが、でも「微妙」という表現が本当に妥当な、親父の変な心境です。

約束通り11時に現れた青年は、プロフィール通りというかそれ以上に爽やかな青年でした。私は、自分が反対の立場の時、相手(妻の父親)に黙りこくられて会話をするのに無茶苦茶苦労した(元々、無口な親父さんだったのですが、当日は超不機嫌だったのでいつも以上に全く会話の糸口が掴めず、当時からよく喋る母親とばっかり話していたのです。)経験があるので、緊張しているであろう相手のためにもこっちから積極的に話をしてあげようと思っていたのですが、必要以上によく喋ったようで、後日娘から「あの異常なハイテンションは何?」と訝しがられる程よく喋ったようです。

最初の1時間自宅で話をした後には、昨年12月の結婚記念日にも妻と行った隣町蓮田のイタリアンレストランに行き、4人でランチを楽しみました。
彼氏にお酒を飲ませて、本音を聞き出そうとしたのですが、彼氏も娘(夜の娘にとっての「本番」に備えてか、自粛してました。)や私(運転手)に遠慮してアルコールを少ししか飲まなかったので、本音を探るまでには至りませんでした。

妻は「娘のどこがいいのですか?」と大胆な質問をしていましたが、よく考えた相手は「娘の自由なところ、考え方」という思いもよらない回答でした。正直、父親として娘が「自由に生きている」とは決して思ってはいないので、この回答は全く思いがけなかったのですが、何となく嬉しい気持ちになりました。

「相手からあの決め言葉が出たらどう回答しようか?」というのは、この日が決まった時から何度となく考えていたのですが、結局この日にあの言葉が相手から出ることはありませんでした。
二人の気持ちは娘から聞いていましたし、この日の夜の先方のご両親との会話では具体的な結婚や式の話も出たようですが、私としては相手から決意なりはっきりとした言葉が出ない限り、具体的な結婚の話をこちらから切り出すことはありません。
なので、この日はそう言った意味ではちょっと中途半端ではありました。
でも、娘を20年以上愛情たっぷりに育てた我々としては、やっぱり「結婚したいんだって?」なんて私から切り出すことは、絶対にしない積もりです。
「親父として mm~」 です。
でも「君を殴らせろ!」という気もありませんが…

「妹の選んだ男に間違いはないと、信じていたのもやはり親父だった。」
とさださんは歌っていますが、私の心境も全く同じで、「娘が選んだ男」なのですから全幅の信頼を置こうと思っています。
妻は早くも結婚式のことや花嫁道具のことなどで頭が一杯のようです。
私も、一緒に娘の幸せを祝ってあげなければいけない立場なのは十分に判ってはいるのですが…
でも、当分この複雑な心境は続きそうです。

「親父として mm~」