麻痺からの脱却~日本二周目挑戦中!~

2010年に脳卒中で右半身麻痺に。でも、「絶対に諦めない」をモットーに現在は『日本2周目』に取り組んでいます。

2、紀伊半島周遊の旅④<和歌山県ーその1>


4月7日(火)

今日は今回の旅行唯一の超のんびり出発日です。
この日は、旅館すぐ近くの乗船場から「瀞峡遊覧船」に途中乗船する予定なのですが、遊覧船のこの旅館の近くの乗り場出航時間が10:00(でも、朝一番!)ということなので、チェックアウトまで旅館でのんびりと滞在することにしたのですが、この旅館のチェックアウト時間は10時なのに、しかも温泉旅館でありながらお風呂は何と朝8時で終了なのだそうです!!
朝食後にもう一度ゆっくりと温泉に浸かるつもりだったのですが、私の目論見は見事に崩れ去りました。
「これだから公共の宿は…」 どうもそんなことを考えてしまいます。

ところで、和歌山/奈良/三重の3県の県境に複雑に位置する熊野川の渓谷「瀞峡」については、何故か中学生の時代から知っていて、私の秘かな「憧れの地」だったのです。
当時の記憶を辿ると、中学生の頃に写真を撮りに山梨の昇仙峡に行った時、一緒に行った同級生が、「紀伊半島の方には、瀞峡というもっと凄い眺めの名勝があるらしい」という話をしていたことを何故か鮮明に覚えていて、「いつかは行ってみたい。」と秘かに思ったことを、40年間忘れずに覚えていたようなのです。
でも、その友人は当時「とろきょう」と呼んでいたので、私もそう覚えていたのですが、正しくは「どろきょう」であることは、不覚にも数年前まで知りませんでした!
昔は、当時そんなに旅行好きでもなかった中学生の私でも知っていたのですから、もっとすごく有名な観光地だと思っていましたが、旅行を職業にするようになってから、「実はそこまで紀伊半島を代表するほどの観光地ではない。」ということも遅れて知ったのですが、40年間憧れ続けた瀞峡ですから、今回の訪問に迷いはありません。

この遊覧船、もっとずっと下流の方に発着のターミナルがあり、そこからだと全行程2時間ぐらいで3,000円を超えるちょっと高価な遊覧船なのですが、見どころのエリアはもっと上流の方にあり、今回宿泊した瀞流荘近くの「小川口乗船場」からの途中乗船ならば、乗船時間も1時間程度で代金も2,000円代とリーズナブルになるので、それもあって前日の宿泊をこの旅館にしたのですが、「途中乗船する場所には、何の設備もなくトイレもないので、遊覧船の予約&チケット購入は瀞流荘で行ってください。」との案内の通りに前日のチェックイン時に予約を済ませ、教えられた通りに乗船場に向かいますが、教えられた乗船場所らしきところには、桟橋すらなく本当に何にもないただの河原なのです!
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途中乗船の乗客もどうやら我々だけのようで、「本当にここで間違いないのかしら?」と大いに不安になりましたが、教えられた案内と目印や駐車場などは間違っていないので信じて待っていると、ほぼ時間通りに遊覧船が近づいてきて、河原に接岸準備を始めるではありませんか!
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「やっぱり、このただの河原から乗るの?」と思いましたが、係員さんは手際よく乗船準備をして、我々夫婦を迎え入れてくれます。始発ターミナルから乗っているお客さんたちは、「何?? この人たち、何でこんな何もないところから乗るの??」と不審な目で遠慮なくジロジロと我々を見ますが、ちゃんと公式案内に載っている公式な乗船所なので、この場を借りて弁解させていただきます!
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自分史上一番謎な乗船場所から乗った遊覧船は、そんなことはお構いなしに上流の見どころまで快調にスピードを上げて走ってゆきます。この日も朝から雨は降り続いていたのですが、ありがたいことに、瀞八丁の見どころに近づいたこの時間帯だけ雨が不思議と止んでくれたので、ハイテク船はその性能を自慢するかのように屋根を開き、渓谷の眺めを「どうだ!」とばかりに我々に見せつけてくれます。確かに、10分前の雨の降り方でこんなふうに窓を開けたら、全員の乗客に「バカヤロー!」と一喝されそうな天気でしたので、このタイミングで雨を止めてくれたことには、本当に神様に感謝しなければなりません。遊覧船はここぞとばかりにスピードを落として、見どころを丁寧に案内してくれます。
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最上流でUターンして下流まで戻る前に、この船でも15分程度船を途中下船しての「お買い物タイム」があります。我々が乗った場所と同じような何もない場所に船を停めますが、ここにも前日の真珠と同じようにこの遊覧船の乗客を狙ったお土産屋さんがお店を出していて、この時とばかりに呼び込みをしています。
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ここには、昨日行った志摩半島の真珠のような高級な名物はないので、簡単なお土産と食べ物が中心。個人的には鮎の塩焼きに食指が動きましたが、緊縮財政は妻も十分に認識しており、先手を打って田楽(こんにゃく)を”はい”と渡されて、何も言えなくなってしまいました。

同じ道を戻る頃には、神様が、「もう、いいだろう」という感じで再びザ~っと激しい雨を降らせ始めましたので、本当に雨が止んだのは遊覧船が見どころでスピードを落とした30分の間だけ… と本当にラッキーな我々でした。
やがて、乗船時と同じ「何もない」乗下船場に船は近づき、今回も我々だけが他のお客さんの好奇な目に晒されながら、豪雨の中何もないただの河原に降ろされます。私の車はすぐ近くの駐車場に停めてあるのですが、船の中からはこの駐車場は見えないので、他のお客さんから見ると、「何にもないただの河原に、こんな豪雨の中降りてって、この二人本当に大丈夫?」と私が逆の立場だったら、余計な心配をしそうですが…
我々の下船後、ほぼ間違いなく何かしらの話題になっているだろうと思います!

車に戻った我々は、いよいよ本格的に和歌山県に入り、熊野古道の目的地でもあった熊野三山を目指します。今日午前中に観光した瀞峡は、ほぼ和歌山県といいながらも、川が三重との県境だったり、途中で案内人さんから「今、ここは奈良県です。」などと言われたり、自分的には生まれて初めて訪れた和歌山県とは、何となくはっきりしない「初対面」でした。でも、和歌山県に入った最初の山道が凄く狭くて急な道路だったので、「和歌山県、はじめまして」と挨拶するような余裕は、全くもってありませんでした。

最初に訪れたのは、一番紀伊半島の内部にある、「熊野本宮大社」。場所が一番遠く(観光しずらいところ)にあるためか、”本宮”と言いながらお客さんはそんなに多くはありません。本当はこのあたりが一番「熊野古道」らしい道があり、元気があれば歩いてみたいところなのですが、足の調子がこのところ決して良くない上に、雨は相変わらず激しいので、古道の散策は断念して本宮の参拝だけにします。
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個人的には、熊野とも何とも書いておらず、ただ”本宮”とだけ書いてあったお守りが、とっても気に行ってしまいました。熊野だ何だと言わず、ただ「本宮」とだけ書いてあるこの余裕に、私も大いに見習うべき部分を感じました。

次に紀伊半島の海岸沿いまで戻って、新宮駅の近くにある三山2つ目の「熊野速玉神社」を訪ねます。この神社、三山の中でも一番マイナーなのでしょうか…? 雨のせいもありますが、人は多くない静かな神社でした。
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三山の最後は「熊野那智大社」。神社の観光というより、「那智の滝」があるので、三山の中でも最もメジャーな観光地です。
本来の計画では山の下の方の無料駐車場に車を停め、熊野古道らしさを存分に味わえる「大門坂」を歩いて登り、大門坂~那智の滝熊野那智大社まで歩きたかったのですが、相変わらずの雨と足の痛みは、私の念願を容赦なく拒絶してくれるのです!
どう考えても歩ける状況にないので山の上部まで車で行き、観光地らしい雨中の客引き合戦の結果有料駐車場に車を停め、とりあえず那智の滝を見に行きます。

那智の滝。滝の大きさを決める基準はさまざまで、単純に「日本で一番大きい滝」という表現は使えないけれど、噂通りそのスケールで言ったら、「日本一に限りなく近い」と言ってもいいと思える滝で、そのスケールは予想していたとは言え、圧倒されっぱなしでした!
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そして一番高い場所にある熊野那智大社に参拝し、熊野三山制覇を達成します。
晴れていれば山並みや下の方が綺麗に見渡せるのでしょうが、雨で煙っていて残念な景色でした。
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すぐ横にある「那智山青岸渡寺」も見学します。この旅行、これまでは神社ばっかりで全くお寺には行っていなかったので、お寺の参拝の仕方をすっかり忘れてしまいました!?
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この日の泊りは、私が入社当時から馴染みがあって、「一度は来てみたい」とずっと思っていた勝浦温泉の超巨大旅館「ホテル浦島」。長年の願望を、会社を辞めてからようやく実現させた形になりますが、貧乏旅行でも宿泊できる格安の宿泊プランがあったことも決め手になりました。
でも、この日の夜、予期せぬ最大のトラブルが私を襲います。

ホテルの夕食は私があんまり好きではないバイキング形式なのですが、思った以上に内容も良く、刺身などもとっても新鮮ですごく美味しそうです!ウキウキしながら沢山取って、「さあ食べよう!」と席に座ろうと思った瞬間、椅子に不具合があり左手中指を大きくカットして、大量の血がドクドクと流れ出し、止まらなくなってしまったのです!!

ホテル従業員の方も集まって来て止血をしてくれますが、20分以上たっても全く血が止まる気配はありません。「病院、行きましょう。」と言って救急病院を手配してくれましたが、「保険証、お持ちですか?」と聞かれて、改めて自分の状況に気づき大いに慌てます。退職直後で保険証を切り替えている最中で、旅行前に新保険証の申込だけは済ませていましたが、まだ保険証を持ってない「無保険」状態の私ですし、(右手足麻痺なので)左手一本で埼玉からここ紀伊半島の先端まで運転してきた私なので、左手が(包帯で)動かせなくなると、運転が出来なくなります。
一瞬にして状況を再認識して、目の前が真っ暗になってしまいました!
とは言え、とりあえず血を止めないことには命に係わる可能性すらあります。ホテルの方が病院まで車に乗せてくれて、とりあえず救急病院に向かいます。救急病院にたまたまいらした優しそうな院長先生は、「自分は外科の専門ではない」と言いながら丁寧に処置して下さり、血はまだ完全には止まらなかったものの、とりあえず最悪の事態だけは避けられそうな状況になりました。

とりあえずホテルに戻って様子を見ることになり、ケガの原因はホテル(の椅子)にあることがはっきりしたので、治療費も全額ホテル負担ということになりました。
とりあえず左手中指は不自由ですが、何とか運転だけは出来そうですので、最悪の事態は回避できそうです…

今日も明日も、大好きな温泉宿泊なのですが、残念ながら、お風呂は当分入れそうにありません!